片付けのお見積りに伺うと、「離婚してから10年間、子供を育てるのに必死で、いつの間にかこんな風になってしまい・・・何とかしなきゃと思いながらも、やっぱりできなかった」と、片付けられなかった理由をお話しくださいました。
ご予算が厳しかったため、お客さまにもご協力いただきつつ、ゴミ屋敷を片付けた時の一部始終をお届けします。
この記事は、2020年7月2日付けでnoteに書いたものですが、リライトし、このサイトに移転しました。
本当は見せるのも恥ずかしい・・・
これから見積りに出かけようとしていた矢先のことです。お客さまからお電話がありました。
「本当は見せるのも恥ずかしい・・・」
業者とはいえ、見ず知らずの人間にゴミやモノがいっぱいのお部屋を見られるのは、かなり勇気がいることです。不安になってしまったお気持ちはよくわかりますが、せっかく第一歩を踏み出そうとしているのに、ここで断念してしまうのは残念すぎます。
それに、本音を言えば、なんとか仕事を取りたいという気持ちもあります。
「見てみないことには先に進めませんし、私たちは慣れているのでご安心ください」
もう少し気の利いたことを言いたかったのですが、月並みな言葉しか出てきませんでした。
「ここまでは車で来ますか? 近隣に片付けを依頼したとバレるのが怖いので・・・」
社名の入ったこんな車が、お宅の前に停まっていたら流石に目立ちます。
ちょっと離れたコインパーキングに車を停めて歩いていくことをご説明したら、少しは安心されたようで、予定どおり見積りに向かうことになりました。
お部屋の様子
お客さまとは、マンションの入口でお会いしましたが、一緒に階段を上って玄関前に着くまでの間も「本当は見せられるようなものでは・・・」と、何度かおっしゃっていました。
「私たちは仕事なんで、どんな状況でも大丈夫です」と言いつつドアを開けると、おっしゃっていた理由もちょっぴり頷けました。
ゴミやモノの壁が玄関から廊下へと続き、奥に向かってさらに高くなっています。過去ベスト5に入るくらいの物量ですが、これくらいなら余裕で入れます。
ドアの枠に手をかけて、よいしょと壁を登り、体をかがめながら奥へと進みました。
扉が開かず、中を確認できない「開かずの間」もありました。
「離婚してから10年間、子供を育てるのに必死で、いつの間にかこんな風になってしまい・・・何とかしなきゃと思いながらも、やっぱりできなかった」
仕事をしながら、子育て、掃除、洗濯、食事の用意、私にはとても無理です。お話を伺ううちに、何とか助けてあげたい!という気持ちが徐々に強くなっていきました。
ただの業者なのに、なんだか上から目線ですいません。
自分の家なのに、帰ってきたくない
心身ともに疲れ果てているところに、病気を患ったことがキッカケで、どんどんモノがたまってしまったのだそうです。
「娘からも片付けようと言われたけど、できなかった」と、悲しそうな表情でおっしゃっていました。
「人の目を気にして玄関を出入りしなければならないし、自分の家なのに帰ってきたくない」
このままではいけないとわかっていても、どうしようもできずに悩んでいた時に、片付けトントンのことをお知りになり、私の家も何とかなるかな? 相談してみようかな? と思っていただけたのだそうです。
ご予算と現実との折り合いをどうつけるか
「以前、他の業者に見積りしてもらったが、とてもじゃないけど高額で頼めなかった」と、その時の見積り金額、ご予算を教えてくださいました。
さらにまずいことに、管理会社が「水漏れの点検で入室したい」と言ってきているそうで、水回り周辺のゴミをなるべく早く片付けなければいけません。
正直、この量をそのご予算で片付けるのは、かなり難しいです。
でも、うちが何も考えずに見積り金額を出したら、途方に暮れてしまうでしょう。
さて、どうしたものか?
人件費は削れないので、ご自身でゴミ出しをしていただき、ゴミの処理費を減らすぐらいしかお安くできる方法はなさそうです。
しかし、これだけの量のゴミを、エレベーターがない環境で「4階からすべて運び出すのは、かなり大変だと思います」と申し上げてみましたが、お客さまは「それでもやります」とのこと。
本気で片付けたいと思っていらっしゃる…そう確信した私は、一旦会社に持ち帰ることにしました。
・・・
上司と相談してみると、あっさり許可がおりて拍子抜けするくらいでした。片付けトントンは、かなり担当者にまかせてもらえる感じです。
でも、お値打ちにしすぎたような気もするし、本当にご自身でゴミ出しできるのかな? かなり不安になってきました。
お客さまのミッション、スタッフのミッション
スタッフの出動予定は3日間で、私たちが分別、お客さまがゴミ出し、私たちが分別、お客さまがゴミ出し、とそれぞれの任務を3回繰り返す計画です。
分別作業中は、お客さまは仕事で家にはいらっしゃいませんが、帰ってきたら大量のゴミを運搬しなければいけないという超ハードスケジュール。もはや、私たちの脳内では、お客さまは完全にチームの一員です。
それぞれのミッションを整理しておきます。
お客さまのミッション
・いるモノいらないモノを、できる限り分ける
・マンションの4階からゴミ出し
スタッフのミッション
・ブランド品のバッグ、高級時計、貴重品、思い出の品を探し出し取っておく
・ゴミや資源の分別、袋詰め
・衣類や紙類、ビン、缶などの資源は持ち帰る
時間の許す限り、清掃もする心意気でいますが、果たして結果は?!
ミッション1日目:ひょっとしたら見積りミ〇?
1日目の出動は6名です。
見積りから作業日まで、数日間の空きがありましたが、その間にもお客さまが頑張られたようで、玄関から廊下にかけて衣類などが2割ほど減っていました。
素晴らしい!私たちも頑張らねば・・・!
トイレが使えないと不便なので、今日中に使える状態に戻せたらいいなと思いました。できるかな?
どんどん分別し、リサイクルに回すペットボトルや衣類・紙類はどんどん運び出し、トラックに積み込みます。
一方、可燃ゴミはなるべく邪魔にならないところにまとめておき、お客さまにゴミ出ししていただく予定ですが、仮置きする場所が狭すぎて、作業の効率が上がりません。
お昼休み直後、スタッフの一人が「開かずの間」の様子を探るため、隙間から中に突入してみました。
すると、さらにドアが閉まり、出れなくなってしまってドキドキ。
考えてみたら、これは大変良いシステムです。終わらせてください・・・と思っていたら、隙間から衣類を出して足場を作り、脱出してきてしまいました。ドアの向こうは天井までいっぱいのようです。
しばらくして、スタッフの一人ごとが聞こえてきました。
予定していた3日で終わらせるのは無理だということが、誰の目にも明らかになってきました。
見積りミス・・・
しかし、今さらそんなことを言っても仕方がありません。
お客さまに、作業日数の追加をお願いし、ご了承いただきました。
一日目の作業が終了し、脱衣所やトイレへの動線は確保できましたが、トイレの中までは片付けられませんでした。残念です!
可燃ゴミは奥の部屋に仮置きしましたが、天井近くまで積み上がっています。
お客さまのゴミ出しミッションは、かなり大変そうです。
ミッション2日目:希望の光が見えてきた!?
初日から約2週間後、お約束の日にスタッフ7名でお邪魔しました。あの可燃ゴミの山は、どうなっているのでしょうか?
ミッションクリア!素晴らしいです。格段に作業しやすくなりました。
私たちも負けてはいられません。
作業開始からしばらくして、洋室の片付けがざっくり終了!ベランダに出られるようになりました。
作業効率を上げるため、可燃ゴミを一旦ベランダに移動します。
午前中のうちに、お風呂とトイレの中はすっかり空になりました。まだ掃除していませんが、トイレは何とか使えそうです。
お風呂は排水溝が詰まっているため、明日、ラバーカップ(すっぽん)を持ってきて修理する予定です。
洋室、トイレ、お風呂の片付けが進んで、「希望の光が見えてきた」と思っていたら、本当に見えてきました。
ナイスタイミング!
2日目の作業が終了し、「開かずの間」は、やっと扉を完全に開けることができましたが、中にはまだたくさんのモノがあります。
和室は2~3名のスタッフが片付けていましたが、半分しか進んでおらず、写真で見ると、あまりやった感じがしません。
ベランダに仮置きした可燃ゴミはこんな感じ。
また、お客さまにガッツで運んでいただく予定です。
ミッション3日目:お風呂に入れるように!トイレが使えるように!
出動スタッフは7名です。
ルイ・ヴィトン、シャネル、エルメスなどのブランド物のバッグや財布、箱に入った時計、アクセサリーなどがたくさん出てたので取っておきました。
3日目の成果をご覧ください。
お風呂は詰まりも直して、バッチリ綺麗になりました!今日から入っていただけます。
トイレも快適に使っていただけます。
数日後、管理会社が水漏れの点検に来るそうなので、『今日中にキッチンを片付けること』も目標の一つでした。
「開かずの間」=キッチンとリビング ビフォー写真
ギリギリでしたが、キッチンの水回りのゴミはなくなりました。
たくさんの可燃ゴミができあがったので、お客さまは大変そうです。
ミッション4日目:扉を外して効率アップ!
スタッフは7名。9日ぶりのミッションです。
大量の可燃ゴミは、すべてなくなっていました!素晴らしい!お客さまの頑張りに感激しました。
キッチンの水漏れ点検の結果は、問題なかったそうで、本当に良かったです!
今回のメインは、リビングの片付け。
洋室を片付けていたスタッフが、扉を外すことに成功!これで、作業効率がグッと上がるはずです。
さらに片付けを進めていくと、長いこと踏み固められていたためか、下の方がカチカチになっていました。
そのため、思っていたよりも進みが遅く、リビングの片付けを終わらせることができませんでした。
ミッション5日目:踏み固められてカチカチになったゴミの片付け
スタッフは5名。前回から10日ほど後のことです。
今回も、可燃ゴミはすべて出し切ってありました。ありがとうございます!
片付け開始前のリビングには、床から50cmほどしかゴミがありませんが、踏み固められてカチカチです。
3時間ほどで分別が完了しました。
ソファは不要ということで、このあと分解して運び出し。
窓が割れて大きな穴が開いていたので、ビニール袋とガムテープで簡易補修をしました。
ミッション6日目:引越しのお手伝い
最終日のスタッフは3名。前回から1ヶ月後です。荷物を運び出したあと全体の清掃を行い、引越しのお手伝いもします。
引越し先へ持っていくモノは、ハケでホコリを払い、水拭きをしました。
清掃や引越しのお手伝いなども終了し、これですべてのミッションが完了しました。
ビフォーアフター
玄関
和室
洋室
リビング
片付けを終えて
可燃・不燃ゴミは全部で400袋超(約2トン)もありました。お客さまのゴミ出しミッションは相当大変だったろうと思います。
短い間でしたが、私たちのチームに入っていただき、本当にありがとうございました。
One for all, All for one
【スタッフ】延べ35名、6日間
【処 分 量】可燃・不燃ゴミ400袋超、ペットボトル160kg、紙類1,680kg、布類1,920kg、缶類65kg、金属類70kg
【金 額】430,000円
お客さまには「片付けたことで価値観や考え方まで変わった」とおっしゃっていただけて、喜びもひとしおです。
お引越し先での新しい暮らし
8か月くらい経ったある日、再び私の携帯に着信がありました。
どうしたんだろう、何かあったんだろうかと、一抹の不安が脳裏をよぎりましたが、電話の向こうからは元気そうなお声。
「その節は、大変お世話になりました。実は、新しい家で困ったことがあったので、またトントンさんに相談したくて」
頼っていただけるのは、営業としてこの上なく嬉しいことです。ひとまずお伺いして、状況を確認することにしました。
お宅に到着して、お客さまと久しぶりの再会です。お部屋に通してくださいましたが、めちゃくちゃ綺麗に片付いています。
ただ、脱衣所の天井がカビだらけ。
原因は、コンクリートに白いペンキが塗ってあるだけなので、お風呂上がりの蒸気などでカビが繁殖しやすい状況だったのです。
湿気の少ない時期ならこれほど酷くはならなかったかもしれませんが、今は2月。結露など、さまざまな要因が重なったのだと思います。
後日、スタッフがカビ取りを実施し、作業後に換気方法や、カビ対策について詳しくご説明しました。
お客さまの声
後日、お客さまからメールが届きました。
何から何までお世話になりました!!トントンさんの力を借りないと本当に無理でした。負のスパイラルに入り、汚部屋で困ってる人は相談できず、悩んでいる人が少なくないと思います。
応援してます。頑張ってください。
優しいお言葉をありがとうございます。
どうぞお幸せに!
・・・
よろしかったら次のブログもご覧ください。
片付けトントンは、ゴミ屋敷・汚部屋の片付けを承っています。まずは、お気軽にお問い合わせください。サービスエリアは愛知県内(一部地域を除く)です。
詳細は、「ゴミ屋敷片付け・掃除ページ」をご覧ください。